“あの人”紹介

naname 料理人
山西 祐輝氏

生産者さんの想いや価値、その土地の匂いまでを伝えたい。

鶴身印刷所の家主が、ぜひご紹介したい “ あの人 ” 。今回は、ナチュラル(自然派)ワインと素材を活かした料理を出す店「naname(ナナメ)」(鶴身印刷所を含む、3 ヶ所で曜日別に間借り営業中)料理人 山西 祐輝さんです。現在の活動や想い、今後の夢などをお聞きしました。

文:林 弘真

大阪、神戸、計 3ヶ所で間借り営業する料理人。

調理師学校卒業後、レストランや洋食店を経て、2018 年からの 3 年間は、空堀商店街(谷町6丁目)の中にある「トレビアンド」という店で店長料理長として勤務していました。しかし、コロナの影響で休業することに。ここからは、自分のやりたかったことを自由にカタチにしていこうと現在の活動をスタートしました。谷町6丁目の「からふる」 @karafuru07shizenhaで間借り営業をしています。その後、家主の鶴身さんとご縁があり、鶴身印刷所でも営業(毎週金曜日)を開始。さらに神戸での営業も決まり、今では、計 3 ヶ所を移動する珍しい料理人です(笑)。営業日以外はワイナリーや生産者さんの畑に行ったり、出張料理やケータリングも承っています。

naname ナチュラルワインバー @ 鶴身印刷所(毎週金曜日営業中)

料理だけを褒められてもあまり嬉しくないんです。

店長料理長時代に無農薬野菜を卸す方と知り合ったり、北海道旅行でワイン農家さんを見学したことがきっかけで生産者の取り組みにどんどん興味を持つようになりました。何にしても原点を知りたいという性格なんです。どこから始まり、派生しているのかという知的好奇心の追求です。現場に行くと「やっぱりな!」ってなるんです。自分が求めていた言葉が返ってくる。
土のこと、育て方、こんな苦労があるというリアルな言葉。料理人は、メッセンジャーだと思っています。料理だけを褒められてもあまり嬉しくないんです。本当に嬉しいのは、お客さんに「これって背景やルーツを含め、全ての想いが込められている」と言われた時です。自分が大切にしていることが伝わった瞬間。その土地の匂いまでを伝えたいんです。これからも、一番大事な生産者さんたちの努力や価値を届けたいと思っています。

無農薬無肥料や有機栽培の素材を活かした料理

ナチュラルワインを知ると、料理もその作り方に近寄っていく。

私自身お酒が弱く、次の日もしんどくなることが多かったんです。けれど、ナチュラルワインだとボトル 1 本するっと飲めちゃう。それが衝撃的で。ナチュラルワインを飲んだ後、添加物の入ったワインを飲むと少し違和感を感じるようにもなりました。その時、「料理もワインと同じで、元々の味を引き出すということで良いのでは」と気づきました。素材をいかに活かしていくか。塩だけでも作り方によって美味しくできるんです。そういう料理の方が必然的にナチュラルワインに合うんです。作り方の方向性が同じ。変に何かやっちゃうとバランスを崩す。だから何もしない。僕がフォーカスしてるのはそのことです。そして今、ワインを自分が最初から最後まで醸造することにもチャレンジしています。長野のぶどう約 1.5 トン(ワインボトル約 1,000 本分)の購入も決まりした。また、とあるきっかけで、みかんの醸造酒にも挑戦しています。今年 7 月頃には本格リリースできればと思っています。どうぞご期待ください。

naname という店名の由来は、サッカーの diagonal(ダイアゴナル:斜め・対角線)プレーと
バルセロナの diagonal 通り(斜め一直線の道)

ナナメに走ってるからこそ、いろんな人たちに関われる。

今後、条件に合った物件があれば、自分の店を構えたいという気持ちもありますが、今の 3 ヶ所での活動が面白すぎるんです。自分が造ったワインと自分の料理をいろんな場所で出す。これをやっている料理人は多分ほとんどいないので、今後どうなるか知りたい。店名のように、普通の料理人とは違う“ナナメ”に突き進みたい。私の中では、真っ直ぐですが(笑)。ナナメに走ってるからこそ、いろんな人たちに関われる。それが楽しい。独自のやり方を試していきたいです。
あと、ワインバーって、料理やワインが美味しいということだけでなく、隣の人と何を喋ったとかが記憶に残るもの。料理やワインはコミュニケーションツール。ここでどんな話をして、どんなつながりがあったとか、「今日1日が楽しく終わったな」となってほしい。なので、料理やワインはもちろん、音楽や空間づくりということも自分の中でかなり大事にしています。3 ヶ所それぞれの場所にあったやり方を常に考えています。大変ですが、飽きないんです。

VIN NATURE & CUISINIER naname
Web サイト:https://yukiyamanishi07.wixsite.com/naname
インスタグラム:https://www.instagram.com/naname.yamanishi/
naname ナチュラルワインバー @ 鶴身印刷所:https://tsurumi-print.com/event/9114/

家主:鶴身 知子
私が思う 山西さんの“特にここがいいところ”

家主:鶴身 知子

山西さんとお会いしたのは、ニキのちいさなお野菜屋のお野菜を作っているniki farmさんの畑でした。

寒い冬。山間の冷たい空気の中、チコリの軟白処理をされていて、当時、店長として働かれている中でも合間を縫って生産者さんの畑に足しげく通う姿に、真摯さと熱量を感じたことを覚えています。

「naname」という屋号にはインタビュー内容の他、生産者の方の想いをリレーする「襷(たすき)」の意味合いがあることをお聞きしました。
そして、私は山西さんの中に働く「力」というものの軸を考えていました。

まず、縦軸方向と横軸方向の、何かしらの力の働きがある。
(それぞれが何を指すかは今も観察中です)

それらの力が働きながらも、斜めに進んでいく動的な力がある。

「斜め」という、道なき道を、真っ直ぐに走り切る。

この熱量って、相当なものだと思うんです。

縦軸と横軸に力が働きながらも、道を見つける。

その力に引っ張られる?ことなく、斜めに走り切る。


もちろん、その道の先も楽しみですが、その熱量が織りなすナチュラルワインバーという場と、料理を、ぜひご堪能頂ければ幸いです。