“あの人”紹介

服飾クリエイター
汐見 哲也氏

オールインワン(一枚もの服)の オンリーワンブランドへ。

鶴身印刷所の家主が、ぜひご紹介したい“あの人”。今回は、オリジナルウェアとカスタムメイド のブランド August Gypsys(オーガストジプシーズ)を運営されている服飾クリエイター 汐見 哲也 さんです。このお仕事をはじめられたきっかけや現在の活動、今後の夢などをお聞きしました。

文:林 弘真

小さい頃から、服に強いこだわりがあった。

服が好きな母や洋裁の先生だった叔母の影響もあってか、小さい頃から服に強いこだわりがあったと思います。幼稚園に着ていく服を、前日の夜に自分でコーディネートしたり、高校の時には、制服を勝手にアレンジしたり(笑)。進路に迷う時期もありましたが、やはり服が作りたかった。服飾の学校を卒業後、アパレル企画会社2社でデザイナーとして腕を磨き、32 歳で独立。これまでに考えていたアイデアを元に自分が好きな服を作り始めたんです。その頃、ブランド名を August Gypsys(オーガストジプシーズ)に。ジミ・ヘンドリックス のバンド・オブ・ジプシーズの響きがカッコ良かったのと私が8月生まれで、オーガストには「威厳のある」という意味もあり、この名前に決めました。

工業用ミシンに向かうと自然と気分が上がるという機械好き

このままだとフリーターになってしまう…。35歳での再始動。

独立当初は、売上げが少なく、生活のためにアルバイトを2件掛け持ちしていました。しかしアルバイトが忙しく、服が作れない状況に。ある日、このままだとフリーターになってしまう…。この生活をリセットしよう!と思い立ち、服づくりに専念する資金を貯めるため、和歌山の自動車部品 工場へ。11 ヶ月間で資金を貯め、大阪に戻り、再スタートを切ります。2011年、35歳の時でした。そこからがオーガストジプシーズの本格スタートです。工業用ミシンを買い、服のことだけに専念。知り合いや友人と展示会を開いているうちにブランドの認知度が上がっていきました。当時、谷町六丁目に住んでいましたが、そこでの飲み仲間やコミュニティに救われたと思います。とても感謝しています。そこから拠点を変えていき、2020年に鶴身印刷所に入所します。 何より、ここの雰囲気が気に入ったんです。

思い立ったら即行動するタイプです。と笑顔で語る汐見さん

着ると1日が楽しくなる服でありたい。

ブランド力を高めるため、自分が得意なレディース服に特化し始めました。と同時に、チャイナボタンを使ったカンフー着的なジャケットやワンピースなどを作っていたら、とても評判が良く、手応えを感じました。カンフー着って、誰もが一度は着てみたいでしょ(笑)。それをワンピースなどに落とし込んだら、かわいいのではと思って。チャイナボタンのつなぎ服なども作り、シリーズ 展開しています。そして今、力を入れているのがサロペット。2019 年に私が体調を崩し、手術を 受けたことで普通のズボンがはけなくなって…。つなぎ服ばかり着ていたら、興味が沸き、いろいろ調べると面白いなと。転んでもタダでは起きないです(笑)。今後、オーガストジプシーズは、オールインワン(一枚もの服)のワンピースやサロペットなどにアクセントとしてチャイナボタンがあるブランドになっていくと思います。それを着ると、1 日が楽しくなる服でありたい。そのためには、自分がいいと思うものを楽しんで作ることが大事だと思っています。

チャイナボタンワンピース
サロペット

今後は、映画や舞台衣装などの製作もしていきたい。

プロとして、期待を超えるもの、美しいものであることを常に意識し、熱情を込めて作っていきたいです。そして今後は、オーガストジプシーズの運営と並行して、個人的に映画や舞台衣装などの製作もしていきたいと思っています。空間を含め、「着る」だけではなく、「魅せる」 活動をしていきたい。個人でもブランドでも表現を発信していくことで、いろんな人に知ってもらえたらいいで すね。鶴身印刷所のアトリエもご連絡いただければ見学可能です。気軽に遊びに来てくださいね。

August Gypsys(オーガストジプシーズ)
インスタグラム:https://www.instagram.com/augustgypsys
Shopサイト:https://augustgypsys.theshop.jp/

家主:鶴身 知子
私が思う 汐見さんの“特にここがいいところ”

家主:鶴身 知子

2021年7月、印刷所で石版印刷の展示・公開制作の場を設けるに際し、「私が着る石版印刷工の服を作ってほしい!」と、汐見さんにお願いしました。

インタビューの中にもあるサロペットを、印刷工として着てみたい。
そう思ったんです。

そして、出来上がった服を着たとき、あまりの嬉しさに印刷所内をスキップして走り回りました。

私自身、カスタムメイドで服を作ってもらったことなどありませんし、体型にコンプレックスがあり、できる限り体のラインが見えない服を選んだり、目立たないようなモノトーンの服を選びがちです。

けれど、汐見さんが作って下さった「印刷工の服」は、印刷工の元気さがありながらも、随所にやわらかさやゆるさ(抜け感っていうんでしょうか)があり、着た瞬間に自分の体が喜ぶのが分かりました。

服を着て、こんなに楽しい。
はじめてのことでした。

August Gypsysショップサイトにもある言葉「袖を通すと一日が楽しくなる」。
ぜひ、みなさまに体験してほしい感覚です。