古賀印刷株式会社 古賀 謙亮

“あの人”紹介

古賀印刷株式会社 営業部
古賀 謙亮 氏

いろんな印刷を体験できる、みんなが集まる場所を作りたい。

鶴身印刷所の家主が、ぜひご紹介したい “ あの人 ” 。今回は、家業である印刷会社の営業職として働きながら、「活版印刷 OLD press(オールドプレス)」を個人で立ち上げ、精力的に活動されている古賀 謙亮さん。活版印刷をはじめたきっかけや今後の夢をお聞きしました。

文:林 弘真

ずっと職人さんへの憧れがあった。

祖父が創業した古賀印刷に入社して3年になります。小さい頃から工場によく連れて行ってもらっていて、おっちゃんたちが大きな印刷機を動かしているのをいつもカッコイイなと思って見ていました。学生時代はサッカーばかりしていましたが、いつかは古賀印刷に入ろうと。ずっと職人さんへの憧れがあったんです。活版印刷機も昔から会社にありましたが、魅力に気づいたのは大学時代。印刷業の勉強をしている時に「あの小さな機械が活版だったんだ!」とあらためて知りました。凹んだり、かすれたり、機械の中が見えて、ガチャンガチャンと刷り上がる様子を実感できるのがなんか良いなって。あと、手間がかかるしめんどくさいところに、僕はなぜか惹かれちゃうんです。

そんなに活版が好きなら、ええもんあるで!

実際に活版印刷をはじめるきっかけとなったのは、桜ノ宮活版倉庫で毎月開催されていた交流イベント“SAKURA <NOMIYA>LETTERPRESS”に参加したことです。活版印刷業の方や関係者の方など、色んな人と知り合えました。大好きな活版の話をしながら、大好きなお酒が飲めるという幸せ(笑)。毎回参加するようになっていたある時、桜ノ宮活版倉庫の方から「そんなに活版が好きなら、ええもんあるで!」と言われ、テキン(手動式の平圧印刷式の活版印刷機)を見せてもらいました。けっこういい値段でしたが… 買っちゃいました(笑)。で、買ったからには、もちろん、やろう!と。

手動式の平圧印刷式の活版印刷機
手でひとつひとつ印刷するテキン(手動式の平圧印刷式の活版印刷機)

古くても良いものを(OLD)、印刷して発信する(press)。

そこから、たくさんの人に声をかけていただけるようになったんです。桜ノ宮で知り合ったデザイナーさんたちにはネーミングやロゴ制作までしてもらいました。古くても良いものを(OLD)、印刷して発信する(press)。そんな想いを込めた“OLD press(オールドプレス)”。OLDには古賀の「古」という意味もあり、とても気に入っています。地元 柏原や各地域のイベントに出店し、募る想いを話していたら、皆さんに引っぱってもらって、トントン拍子に事が進み、この3年はジェットコースターに乗ってるような気分。鶴身さんからもお誘いいただいて、鶴身印刷所でもワークショップを行いました。また、最近はシルクスクリーン印刷の方たちともコラボして、新しいプロジェクトユニットでの活動も行っています。

OLD press(オールドプレス)ロゴ
活版×シルクスクリーン印刷のプロジェクトユニット「PARTS」の活動も新たにスタート

行動することに意味がある。やりたいことは絶対に言う。

活版印刷を通じて、印刷に興味を持ってもらえたらうれしいです。職人さんにもっと光をあてたい。めっちゃカッコイイんやで!と自分が感じていることを多くの人に知ってもらいたいです。職人さんをはじめ、周りにスゴイ人がたくさんいることも分かったので、このパワーを集約すれば!と考えるとワクワクしかしない(笑)。もちろんビジネスとして継続できるようにしていきたいと考えています。

今後の夢はたくさんありますが、1つは、柏原で印刷体験ができるホテルのようなものを作ってみたい。1階に活版やシルクスクリーン印刷を体験できるワークスペースとカフェやバー、2階にはショップ、3階に宿泊施設があるような、みんなが集まる場所。実は、鶴身さんの影響をすごく受けています。真似したいなと思っているのは、何よりその行動力。僕も行動することに意味があると思っています。そして、やりたいことがあれば、信用する人たちに絶対言うようにしています。今は皆さんに与えてもらってるばかりですが、いつか恩返しができるようにがんばりたいです。

古賀印刷株式会社 古賀 謙亮

古賀印刷株式会社 事業内容

商業印刷物及び広告の企画デザインから製作全般
https://www.kogaprinting.co.jp

活版印刷 OLD press

https://www.instagram.com/oldpress_analogy/

家主:鶴身 知子
私が思う 古賀さんの“特にここがいいところ”

家主:鶴身 知子

古賀さんって不思議な人です(会ってみると分かります)。
私は「妖精」って呼んでいます。

こんな話を挟んで申し訳ないのですが、印刷会社が年間廃業している数をご存知ですか。
鶴身印刷所が印刷業をやめた2015年は印刷・同関連業の休廃業・解散285件、倒産132件。今も増加しており継続が厳しい業界の一つだと思います。

この状況で印刷業を継ぐって、ものづくりに対する確かな思いと相当な熱量がそこにあると思うんです。
そして、古賀さんのそれは驚くほど揺らがない。
「そんなん無理やわ」って言われても(内心分かりませんが)けろっとしてる。
「だって、これ、ええねんもん」っていう思いが確かにあって、なおかつそれを正義にして振りかざさない。ただ、素直に胸の中に置いている。

一方でとても愛らしい方です。ふわっとして、いつもにこにこしています。人やものの「すてきなところ」を見つけること、楽しむこと、信頼することが自然とできる方です。
ゆえに、みんなに愛される存在だと思います。

揺らがなさとやわらかさが優しく同居する古賀さんの生み出すものは、きっと、ものづくりという枠に留まらず、いろんな人や場所を笑顔にする、そんな気がしています。