
印刷所家主が所属するNPO法人水越川流域生活(YAMAYAMA)は、金剛山と葛城山のふもとにある水越川の流域にあり、山で生きるための様々なことを学び、実践する団体である。
それぞれが、米を作り、畑で作物を作り、竹や木を伐って活用し、古民家を片付けたり、直したり、地域の耕作放棄地を整備したり、道具を作ったり、直したり、羊を飼ったり、ロバを飼ったり、様々なことをして暮らしている。
2024年11月。チームの有志で集まり、金剛山のふもとで杉とヒノキの間伐が始まった。
森林ボランティア協会の講師を招いての、ロープワークを用いた講習会形式だった。

林野庁の助成金事業を行っている関係上、チェーンソーで竹を伐ることが専らだった我々にとって、伐木のための道具の使い方、ロープの結び方はもとより、木をどう倒したらよいかということも、ほぼ初めての状態だった。
真冬、スパイク付き長靴を履いても底冷えする山で、私たちは木を見て、伐倒し、葉枯らしをしてから材を運んだ。

伐った木はウィンチを使い、搬出場所まで移動させた。
この時点で幅15-20cm、長さ3m程のスギ・ヒノキが40本ほどあった。


搬出時には、田中製材所の田中由虎さんも参加してくださった。
この材の半分を、由虎さんのところで製材していただくことをお願いしたところ、快諾いただいた上に、搬出も協力してくださったのである。

架線を引いて、木材をふもとに下ろし、半分を田中製材所さんに搬入。
そのときの動画はこちら。
このワイヤー一本を張るのにも、地形を考え、どういった器具で張れば安全に下ろせるか、材をどう結び、誰がどこに立ち、何をすればよいか、という様々な要素があり、それらを自分の手足を動かすことで学んだ。
そうして、この材を製材していただいて、木工家の賀來さんに椅子づくりを教えたいただいた。

この椅子は、ただ私が作りたかった…ということではない。
山の実情から町までを繋ぐ一つの「道具」として、みなさんに作ってもらうワークショップを開くための(賀來さん曰く)「プロトタイピング」である。
例えば、私たちが金銭を対価として買うものは、たくさんある。
美味しいから、売れているから、勧められたから、デザインが好きだから、その機能が欲しいから、自分では作れないから…。
買い求める動機や理由は様々だろうと思う。
ただ、その動機や理由の先に、その物が生まれた場所がある。
その物を作った・携わった人がいる。
私たちは、そのことを、どれだけ感じられる生活をしているだろうか。
一例だが、私は今、野菜をスーパーで買わない。
この南河内でできた、自分と仲間の野菜を食べる。
料理をするとき、作った人の顔が見える。
自分が生きている土地の食べものは、その場所、土や水、空が見える。
調理するのが楽しくなるし、どうやったって、美味しくなる。
そういった物事を、引いては土地を、少しでも感じてもらうきっかけを作りたかった。

印刷所で賀來さんに座編みを教えていただき、このような椅子になった。
座編みは初めてだったが、手順を分かりやすく教えていただいたおかげで迷子にならずに着地できた。
賀來さんは「椅子というものは必ず家にある」ということと、木と私たちの身体=身体性の繋がりをお話してくれた。
お話を聞きながら、手を動かし、いろいろなことを考えた。
土地のことに触れてもらえる椅子。
今の山の実状。
拡大造林から現在までの流れを、どう考え、私たちの世代で何ができるだろうか。
どう行動を起こせるだろうか。
ちなみに、この「拡大造林」については、田中製材所さんの随筆
「丸太の単価はなぜ上がらないのか【前編】——就職氷河期世代と木の相似形 | news | 田中製材所」
「丸太の単価はなぜ上がらないのか【中編】——山の木は私だ | news | 田中製材所
「丸太の単価はなぜ上がらないのか【後編】——「関係」が時間を救う | news | 田中製材所
この3本のお話が大変興味深かった(それ以外のお話も、非常に面白い)。
(由虎さんの随筆は、環境や時代といった大きい力・流れを読み解きながらも、「(結果、今の)個人の存在と行動がどうあるか」というところに重心があるような気がして、身体性を持って読んでいくことができ、血肉になる言葉で満たされている文章だと感じている)
そして、出来上がった椅子に座って思う。
私は私の身体で学んだことで、この先の山の課題に寄与したい。
印刷所がある京橋で生まれ育ち、今もここを仕事場とするが、南河内に住み、田畑と山の作業をしながら、仲間との繋がりと体験の中で、私は生きている。
町にいたら、供給されることに慣れて、考えもしなかったり、見もしなかったことがたくさんある。
それを、今は、少しずつ経験している。
まず、賀來さんとの椅子づくりは、相談の結果、2026年秋から仕切り直し、もう少し小さいスツールを作ることにした。
仲間と、山の間伐が始まる。
学んだことを精一杯活かし、山から町への言葉を積み重ねていきたい。