服飾デザイナー あらい けんじ 氏

“あの人”紹介

服飾デザイナー
あらい けんじ 氏

もっと深く、もっと面白く。“蝶ネクタイ”を通じて、新たな価値を発信する。

本当に価値のあるモノやコトを、少しずつ丁寧に手間暇かけてつくる。鶴身印刷所の家主が、ぜひご紹介したい “ あの人 ” 。お一人目は、ファッションデザイン事務所「アナザーデザイン研究所」代表 あらい けんじさん。運営されている、蝶ネクタイのブランドのことやデザインへの熱い想いをお聞きしました。

文:林 弘真

蝶ネクタイって、どうしてこんなカタチなんだろう?

昔からメンズウェアのデザインに興味があり、学んでいく中で「そういえば、蝶ネクタイってカタチが限られてるけど、なぜこのカタチなんだろう?」という疑問を持ったんです。調べていくと、様々な面白いカタチがあることが分かりました。そこから、歴史や文化をどんどん掘り下げ、気がつくと、復刻することが面白くなり、新しいデザインアイデアも生まれるようになったんです。

蝶ネクタイブランド「BOWTIE SPECIMENS ボウタイ スペシメンズ」

現在、主に蝶ネクタイブランドの運営をしています。ブランド名「BOWTIE SPECIMENS(ボウタイ スペシメンズ)」の意味は、「蝶ネクタイの標本」。蝶の標本のように、多様な造形美を蝶ネクタイを使って表現したいという発想から生まれました。僕は、まとめるのが好きなんです(笑)。何でも整理したいという気質。歴史やルーツを理解できた方が、きっとシェアしやすいと思う。だから、図鑑化・標本化する。将来的には、蝶ネクタイの博物館を作ってみたいんです。

アトリエに整然と飾られた蝶ネクタイ
アトリエに整然と飾られた蝶ネクタイ

YouTubeで、ネクタイの結び方も配信。

蝶ネクタイ(BOW TIE)というネックウエアが、欧米から世界中に普及して約150 年。その歴史探究を土台に、形やデザインはもちろん、着こなしにおいても、クリエイティブで文化的なスタイルを提案しています。男性用アイテムと思っている方が多いようですが、老若男女どんな方も蝶ネクタイを結んでお洒落ができます。普段、蝶ネクタイを結ぶということ自体イメージできない方は、「蝶ネクタイ メンズ コーデ」「蝶ネクタイ レディース コーデ」などでネット画像検索をしてみてください。蝶ネクタイが確実に広まっていることに気付いてもらえるはずです。
自分が調べてきた、ネックウェアに関する知識をYouTube やWEB、いろんな所で発信・提供したいです。あと、YouTube 見たよと言ってくれる人がいるのは、素直に嬉しい。探究を継続する力になっています。

服飾デザイナー あらい けんじ 氏
Bow Tie Designer TV( YouTubeチャンネル)

もっと自由に、面白いデザインをしていきたい。

いろんなカタチの蝶ネクタイは、その人の個性を印象づけるシンボリックなアイテムになる。ヨーロッパのマネではなく、もっと自由にアレンジしていきたいです。
約10年間、探求を続けてきたことで素材はたくさん揃いました。蝶ネクタイの八百屋さんです(笑)。
これからは、いろんなクリエイターの方ともコラボして、この素材をどんどん料理していきたい。今は蝶ネクタイデザインに1点集中していますが、和服などのデザインにも挑戦していきたいです。

服飾デザイナー あらい けんじ 氏

アナザーデザイン研究所 事業内容

ネクタイ、蝶ネクタイ等のネックウェアのデザイン企画・サンプル製作
ネクタイの歴史や結び方等のレクチャー、スタイリング提案、
メンズファッション(紳士服)や和服(着物)も含めた新しいアパレル企画・提案など

BOWTIE SPECIMENS(ボウタイ スペシメンズ)WEB サイト

家主:鶴身 知子
私が思う あらいさんの“特にここがいいところ”

家主:鶴身 知子

正直なことを申し上げると、私はメンズウェアに興味がありません。

酷い出だしですね。
そんな私が、あらいさんのデザインする蝶ネクタイの中で、有無を言わさず「美しい」と感じるものが数点あります。

形、生地の質感、配色。

蝶ネクタイというものを構成する要素、どれをとっても過不足なく、そこにそう「在る」ことが最初から約束されていたような美しさです。

これらのデザインは、あらいさんの直感とも言える感性や感覚が働いていることはもちろん、ご自身のお話にもあるように、膨大な歴史資料を探求し、整理・分類した年月に裏打ちされていることは言うまでもありません。
また、以前、お話を伺ったのですが、根底にある「服飾を介した、人と社会の自由さ・創造性」に対する豊かな思いと、顕在化していないアイディアは必聴です。

実直な探究者である一方、ユニークなデザインを行う。
アンビバレンスな存在があらいさんの魅力だと思います。
きっと「こういうことできる?」と、つついてみると、意図しない面白いものが生まれる気がします。